独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院
~課題を明確にした分析と、診療部門のアクションを促した情報発信により、救急医療係数のアップを実現!~
久留米総合病院様では2017年4月より病院分析システムLibraをご利用いただいております。今回はLibraを使って病院内での改善活動を推進されたとお聞きし、インタビューに伺いました。
独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院
| 病床数 | 175床 一般病床:167床/地域包括:8床 |
|---|---|
| 経営区分 | 公的病院 |
| エリア | 九州地方 |
| インタビュー ご協力者様 |
医事課 重松政樹 様 |
貴院では、入院診療単価の向上が課題の1つであったと伺いました。改善活動当時のことをお聞かせください。
(重松氏)当院が位置する久留米市は、比較的多くの急性期病院があります。その中でも乳がん治療を始めとする婦人科系疾患に特長を持つ急性期病院としての強みを持っていると自負しているのですが、経営的側面から分析をしてみると、外来診療単価は他院に比べて高いのに、入院診療単価は低い傾向にありました。その要因として、以前から病院の中では「DPC機能評価係数Ⅱの低さ」が課題として挙げられていました。機能評価係数Ⅰについては、現在、取得可能なものはほぼ届け出ており、更に基準を上げるためには、ある程度、中期的な人材育成や地域性を踏まえた経営判断も必要です。一方、機能評価係数Ⅱは、保険診療係数以外はすべて全国平均よりも低く、それが何故なのか、どのようにしたらよいのか、ということについて十分に検討してきていませんでした。そこで、今回、地域性や病院機能を考え、特に「救急医療係数」「複雑性係数」「効率性係数」の3つに絞り、現状の把握と改善活動に取り組むこととなりました。
機能評価係数Ⅱ向上の取り組みは多くの急性期病院の関心が高いテーマの1つです。具体的にどのように取り組まれたのか、お聞かせください。
(重松氏) 特に成果が出たのは、救急医療係数です。主に2つの点に取り組みました。1つ目は救急医療管理加算の算定基準の可視化です。Libraで分析した結果、DPCコード別に救急医療管理加算の算定率を集計すると、いくつかのDPCコードで算定率の低いものが散見されました。そこで、その算定フローを見直すことにしたんです。それまでは、医師が記載したカルテ記録をそのまま医事課が請求処理していました。査定や返戻のことを考えると、どうしてもカルテ等の記録から確実に加算を算定できるもののみを算定していました。病院として、救急医療管理加算の算定対象とはどのような患者になるのか、その基準を整理すると共に、チェックシート化して、救急外来や病棟に配布しました(図1)。お忙しい先生方に協力を仰ぐ以上、なるべく負担を抑えるために、原則、チェックとサインだけの方法を目指したところ、徐々に算定件数が増加してきました。 (奥中) 救急医療管理加算1だけでなく加算2についても、事例形式で「加算1に準ずる状態」を例示されているのは、分かりやすいですね。医師の負担も最小限に抑えられて使いやすそうです。
(重松氏) また、患者の入院と同時にチェックシートが医事課に回るようになり、比較的タイムリーに、医事課も患者情報を入手することができるようになりました。このスピーディーな情報共有には、看護部門の協力がありがたかったです。チェックシートの存在を知っている看護師の皆さんが、医師をフォローしてくれたため、円滑に患者情報を確認することが出来ました。これにより、DPCコード別に当院の主要疾患における加算の算定率を向上させることが出来ました。
2つ目には、月1回開催している救急委員会の見直しです。算定フローの見直しするだけでなく、そもそも救急患者の受入状況、断り率などに問題がないか、田中院長が中心となり医師に働きかけてくださいました。今後は入院48時間以内の資源病名チェックを強化し、よりスピーディーな情報収集を図る予定です。
効率性係数や複雑性係数についてはどのような取り組みをされましたか。
(重松氏) 効率性係数については、「入院期間Ⅱ以内退院患者割合」と「年12症例以上」という基準でDPCコードごとに集計してみました。DPCコード別に全国平均と比べても、当院の平均在院日数は決して長くはないことが明らかになりました。そこで、平均在院日数の短縮化は病床稼働率の低下にも繋がりかねないことから、まずは継続的に係数の対象となりそうなDPCコードの状況をモニタリングをする、ということで留めることとなりました。
複雑性係数については、コーディング精度を強化する取り組みを進めています。例えば、副傷病名により分岐が分かれるようなDPCコードについては、一般的には「副傷病あり」の方が包括評価される1日当たりの点数が高く、DPC期間も長めである傾向があります。副傷病に該当する病名への治療が提供されているにもかかわらず、「副傷病なし」としてコーディングをしてしまうことで、請求業務だけでなく病院として付与される係数も低く評価されてしまうリスクがあるのです。そこで当院では、どのような傷病名で何点変わるのか、他院に比べて「副傷病あり」の割合がどう違うのか、といったことを分析・整理し、診療科に情報提供をしています。急激な変化にはなりませんが、こうした現状把握と情報発信を継続的に進めていきたいと思っています。
2019年4月の機能評価係数Ⅱが付与されましたが、いかがでしたか。
(重松氏) 診療報酬改定や他病院の実績も影響するので自院の努力が100%報われるというわけではありませんが、救急医療係数については1.7倍も向上し、病院全体としても係数が増える結果となりました。まだまだ全国と比べると決して高い数値ではないですが、病院全体での取り組みが成果に繋がったことは嬉しかったですね。
病院内での情報管理を扱う体制をこれから変えていくと聞きました。具体的にはどのようになるのですか。
(重松氏) 当院は決して規模が大きい病院というわけではありませんが、やはり様々なデータを収集、分析して院内に発信していくことの重要性に気づかされました。今回の件について事務長と相談をした中で、経営会議に参加しない一般職の事務職員も、一定の範囲で自院のことを知る機会が必要という話になりました。まずは事務部門の総務、医事、経理、健診センターが一緒に集まる場を設けたこともあります。意外とお互いの仕事のことで知らないのだと気づかされ、有意義な時間になりました。これは今後も継続的に開催したいと思っています。また2019年4月より、情報管理室を新しく設置し、診療情報管理士2名を中心に、がん登録やDPCデータ分析を担っていくこととなりました。今後、ますます事務職員から診療部門へ様々な働きかけをしていきたいと思っています。
今後の貴院の取り組みの中で、病院分析システムLibraは、どのように活用いただけますでしょうか。また期待されること等あれば、お聞かせください。
(重松氏) 係数分析に限らず、今もいくつかの機能を使っています。例えば、後発医薬品置き換えシミュレーションの数量シェアは毎月チェックして、薬剤部長に共有しています。当院は既に、看護必要度ⅠからⅡに切り替えていますので、Libraの看護必要度チェックについても活用し、HファイルとEFファイルの差を見て看護部に情報を提供しています。3~4ヶ月程続けていると、徐々にその差も縮まり、データ精度が上がってきているように思います。主に、医薬品の記録の残し方や創傷処置の算定基準の見直し、心電図モニターの入力漏れ防止などが成果を出してきています。
(奥中) Libraの各機能で抽出したデータを、診療部門の方にも発信いただき、ありがとうございます。要望等はいかがでしょうか。
(重松氏) そうですね、やはり1つにはベンチマーク先の数を早く増やしてもらいたいというのがあります。また、診療報酬算定チェック機能で表示される算定可能患者情報については、患者一覧機能をより充実化させてもらえると良いですね。1つの画面でいろいろな情報を確認できるようになると、今よりも使いやすくなると思っています。
(奥中) ありがとうございます。皆様に利用いただく場面を踏まえて、より使いやすい画面構成等にブラッシュアップしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
